東電OL殺人事件


−経緯−
平成9年3月19日午後5時過ぎ、東京都・渋谷区円山町のアパート(木造2階建て)の「喜寿荘」1階101号室の空き部屋で、東京電力のエリート・キャリア女性の渡邉泰子さん(当時39歳)が絞殺死体で発見された。

渡邉さんは、慶応大学を卒業後、父親が勤めていた東京電力に入社、経済調査室副室長まで上りつめたキャリア女性であった。事件当時は、父親が50代で他界し杉並区の自宅で母親と妹の3人暮らしであった。

その渡邉さんは、毎日午後5時20分に定時退社をしていたのだが、何故か帰宅は殆ど深夜だったことがその後の調査で判明した。

渡邉さんの絞殺死体を発見したのは、アパート管理を任されていたネパール料理店の店長Mさんで、101号室の玄関脇にある小窓が開いており、そこから覗くと女性が仰向けに倒れていた。不審に思ったMさんが警察に届けた。

警察の現場検証では、渡邉さんの洋服(ブルーのツーピース)や下着には特に乱れた様子は無かったが、どういう訳か渡邉さんの髪の毛にはポールペンが絡んでいた。また、彼女のショルダーバックは口が開いていた。トイレでは使用済みのコンドームも発見された。
死体検視の結果、渡邉さんの死因は絞殺で犯行時間は3月8日の夜から9日未明とされた。

−彼女の二つの顔−
渡邉さんは、女性エリート幹部社員という顔と夜の売春婦という二つの顔を持っていたことが世間で大きな衝撃と興味から、週刊誌を中心としたマスメディアに徹底的にプライベートを公開されてしまった。

彼女は定時退社した後、ホテトルで仲介してもらい渋谷区道玄坂周辺で売春行為をしていた。彼女は、付近のホテルや駐車場、ビルの非常口など場所に拘らず、行為をしたという。地元では、結構知れた存在だったようだ。
彼女の年収からして、金目当てとは思われない。一流会社の幹部社員が何故、このような行為をしていたのか?

警察の聞き込み捜査で、犯行日時と思われる3月8日午後11時25分頃、渡邉さんと思われる女性と男が「喜寿荘」101号室に入るのを目撃したという証言を得た。また、同日11時45分頃、このアパートの住居人である女性から101号室を通りかかった際、女性の喘ぎ声が聞こえたとの証言も得た。渡邉さんは、以前から「喜寿荘」101号室を売春目的で利用していたようだ。

−犯人は?−
5月20日警察は、「喜寿荘」の隣のKビルに居住しているネパール国籍のゴビンダ・マイナリ容疑者(当時30歳)を逮捕した。警察は、101号室の鍵を持っていたという事と、事件当日にゴビンダは渡邉さんと101号室に入って行くのを目撃したということが決め手として逮捕された。

実は、ゴビンダ容疑者はKビルに5人で同居していた。1月になって、近いうちに彼の姉が来日するため、知り合いのネパール料理店のM店長に依頼し「喜寿荘」の空き部屋である101号室の鍵を預かり、同居人の4人に部屋を見せ、移転するよう要請した。結局、家賃が高いことなどの理由で、この4人は移転を拒否した。また、ゴビンダの姉も来日出来ないことになり「喜寿荘」の移転が無くなった。が、ゴビンダ容疑者は、M店長に鍵を返却していなかった。結局、この同居人の一人に、鍵をM店長に返却しておいてと渡したのは3月6日(事件の二日前)になっていた。

ゴビンダ容疑者は、公判で一貫して犯行事実を否認している。しかし、渡邉さんとの性行為に関しては、前年12月に路上で渡邉さんに声を掛けられてKビルの自室で性行為したこと、その後同居人の手前もあり、隣の「喜寿荘」でも同様の行為をしたことを認めた。また、犯行現場で発見されたコンドームの精液のDNA鑑定では、精液はゴビンダ容疑者の物と判定された。

だが、犯行当日の11時25分頃、「Kビル付近でゴビンダ容疑者と思われる男と渡邉さんが雑談していることろを見た」という証言があるが(逮捕の決定的な理由としている)、ゴビンダ容疑者の勤務先である料理店(海浜幕張駅)の退社時刻である午後10時から11時25分に渋谷区の自宅に戻ることが可能であったか(実際には不可能にちかい)?また犯行現場に残されていた陰毛は、ゴビンタ容疑者以外の物も発見されている。

−公判−
検察側は-@被害者と面識がある、A現場に残された体液や体毛の血液型やDNA型が一致、B現場アパートの鍵を持っていた、C金に困っていた-などの状況証拠を積み重ね、無期懲役を求刑。

平成12年4月、東京地裁は現場から第三者の体毛が見つかったことなどを「解明できない疑問点」として挙げ「第三者が犯行時、現場にいた可能性も否定できず、立証不十分」と無罪を言い渡した。しかし、同年12月、東京高裁は「犯人が被告と別人でも疑問は残る。被告の犯人性が疑われるという結論にはならない」として無期懲役とする逆転判決。
平成13年10月22日、最高裁はゴビンダ・プラサド・マイナリ被告の上告を棄却し無期懲役が確定した。

-再審決定-
ゴビンダは、あくまでも自分は無罪であることを訴えながら服役。弁護団や支援団体も冤罪事件であるとしてゴビンダを支援した。その結果、被害者の渡邉さんの体に残されていた体液やアパートから発見された体毛を再度DNA鑑定した結果、あきらかにゴビンダとは異なる第三者のXのものであることが明白になった。このため弁護団は、新たな証拠が発見されたとして再審請求を行った。

これを受けて平成24年6月7日、東京高裁は弁護側の主張を認めて裁判のやり直しとゴビンダの刑の執行停止を決定した。ゴビンダは即日釈放されたが、不法滞在の罪により東京入管横浜支局に身柄を移され家族と面会した。近日中に故国のネパールに帰国できる。


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