札幌・ロボトミー訴訟事件


−経緯−
昭和48年6月11日、札幌市の私立精神病院「北全病院」から入院患者の男性2人が脱走し札幌弁護士会に逃げ込んだ。2人は北全病院の実情を訴えた。これによると、同病院では病院関係者が患者に対して日常的に暴行を繰り返し、院外での様々な作業を強制的にやらされたり院外の人との関係を遮断するため手紙の検閲を行っていた。この事実を知った北大医学部の学生、医師、市民団体らが実態の究明に乗り出した。

これが端緒となり、同病院でアルコール依存症により入院していた男性がロボトミー手術を受けさせられて廃人同様にされていた事実が判明した。この男性は元鉄筋工のAさん(当時29歳)で、飲酒がもとで体調を崩し札幌市内の病院で診察を受けたところ、肝硬変・糖尿病・慢性胃炎の診断を受けていた。

Aさんには子供2人がいて生活保護を受けていた。この時、ケースワーカから北全病院を紹介され同年3月に転院した。北全病院の比田勝院長はAさんを精神病質ならびにアルコール依存症と診断し閉鎖病棟に入院させた。さっそく大量の向精神薬を投与したが、効果がみられなかった。そこで、同病院は札幌市立病院の外科医長・竹田保医師にロボトミー手術を依頼。同年4月19日と6月5日の2回にわたってロボトミー手術を行った。

−廃人同様−
同年6月29日に退院したAさんはまったく別人になっていた。無気力・無関心・尿失禁、衣類の脱ぎ着も出来なくなっていた。前述の市民団体らがこの実態を重視し7月27日、札幌地裁に提訴した。

昭和53年9月29日札幌地裁は、「ロボトミー手術は厚生省(現、厚生労働省)の治療指針に入っている゛最後の治療法゛として認めており、手術そのものに違法性は無いが、北全病院はAさんの承諾を得ず、しかも最後の手段としてロボトミー手術をしたのではなかった事、竹田医師は診断義務を怠り漠然と手術をした点に責任がある」とした上でAさんに慰謝料など4152万円の賠償を命じた。

昭和61年3月31日札幌高裁において比田院長が2000万円、執刀医の竹田医師が1000万円をAさんに支払うことで和解が成立した。ロボトミー手術は、昭和54年9月に起きた「ロボトミー殺人事件」同様、全国規模で社会問題となった。


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