「無尽蔵」殺人事件


−経緯−

昭和57年12月4日、警視庁は東京・池袋の古美術商「無尽蔵」の店員・笹川竜則を横領の疑いで逮捕した。実はこの逮捕は別件逮捕であり警察の本丸捜査は無尽蔵の店主・長尾泰次さんが同年2月頃に失踪した事件で笹川をマークしていたのだった。

無尽蔵の店主・長尾さんは「三越スキャンダル事件」で開催された展示秘宝のニセモノに関与していたとみられる人物だった。捜査当局は、長尾さんの失踪は事件に巻き込まれた可能性があるとして捜査を開始した。その結果、同年9月頃から店員の笹川が殺害して死体を隠したとみて尾行を続けた。

9月26日以降、警察は連日2週間にわたって笹川を任意出頭させ取り調べる一方、笹川、長尾宅、無尽蔵などを家宅捜索をした。この時の家宅捜索令状の請求状には「被疑者不詳の殺人死体遺棄事件について捜査のため」と記載されたいた。警察はこの段階で(長尾さんの生死さえ判明していない)長尾さんが殺害されているとみていた。

別件逮捕された笹川は、厳しい追及の中で長尾さんの殺害と死体遺棄を認めた。その自白によれば、同年2月24日午後7時40分頃、無尽蔵店内で長尾さんと仕事上のことで激しく口論となり、激情にかられて長尾さんを撲殺し死体は黄色の布で梱包、一夜店に置き、翌日の夜、車に積み込んだまま10日間放置。3月6日夜、神奈川県川崎市の京浜運河へ遺棄したというものだった。

−不審−
昭和60年3月13日東京地裁は笹川に懲役13年を言い渡した。笹川は直ちに控訴して無実を訴えた。確かに、本件は笹川の自白だけで証拠は皆無であり、なによりも「死体無き殺人事件」として話題を集めた。

笹川の犯行説で代表的な疑問点は以下の通りである。
@無尽蔵の店は2階にあり、身長180センチ・体重80キロもあった長尾さんを笹川1人で死体を運べたのか?
A殺害直後、笹川は同ビル1階の喫茶店でコーヒを飲んでいることが確認されている。返り血を浴びているはずの笹川に可能であったのか?
B死体を積んだとされる車は駐車会社にキーを預けており、いつ発見されるかも判らない状態で10日間も停めておくだろうか?
C死体を遺棄した場所は水深5メートルで当日は土曜日である。大きな黄色い布が浮き沈みしていれば釣り人が気付くはずだ。現に、警察は死体遺棄場所の捜索を何回も行ったが発見はできなかった。


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