富士フィルム専務殺人事件


−経緯−
平成6年2月28日、東京都世田谷区の富士フィルム専務・鈴木順太郎さん(当時61歳)が自宅玄関で突然男に刃物で刺された。鈴木さんは病院に搬送されたが出血多量で死亡した。

警察が付近の聞き込み捜査を開始したところ、鈴木宅前に不審な関西ナンバーの車が長時間駐車していたことが判明。近所の人がこのナンバーを覚えていたこと、その情報に基づき速度違反を取り締まるNシステムによる特定と高速道路通行券の指紋から暴力団砂子組系組員・沖山誠一(仮名、当時29歳)が犯人と断定した。

さらに、富士フィルム社に対する捜査では鈴木さんが総務部長時代に総会屋と絶縁したのを恨んだ総会屋が事件から40日前の株主総会で4時間以上も総会を妨害し、酒のビンを投げつけて逮捕される事件をおこしていたことが判明した。また、同社からでる産業廃棄物の利権をめぐって以前から暴力団とトラブルが続いていたことも明るみにでた。

警察は、沖山と沖山の所属する糸川忠組長(仮名、当時40歳)を逮捕した。逮捕当初は沖山、糸川は黙秘を続けており、更に富士フィルム側も「真実を明かせばマスコミに洩れ暴力団から逆恨みされる。警察は完全には守ってくれない」と容易に打ち明けず、捜査は難航を極めた。

−動機と貧しい報奨−
警察の厳しい追及で事件の全容が明らかになった。それによると、山口組系の総会屋が富士フィルムから絶縁宣告されたことに腹を立て、同社とはまったく接点が無い砂子組の糸川組長に「10万円」で報復と脅しを依頼したのが発端だった。

そこで、糸川組長は子分の沖山に「傷をつけてこい」と命令。沖山は鈴木宅前で張り込みを続けて鈴木さんが出てきたところを殺すことがないよう下半身を狙って刺した。ところが、鈴木さんが暴れたため傷が深くなり出血多量で死亡したのだった。

この事件で、沖山が運転手として依頼した山口組系組員の岡島洋介(仮名、当時24歳)には報酬として「5万円」、下見のため関西から東京の鈴木宅を往復した別の運転手には「パンと牛乳」だけだった。犯行の片棒をかついだ岡島は警察に出頭する前に山口組幹部から「セータを買ってもらい」感激して刑務所に。

沖山は平成7年12月12日懲役14年、糸川は平成11年11月29日懲役11年の判決。2人は共に控訴したが棄却されている。岡島は運転しただけで懲役6年が確定。

一流会社の専務刺殺事件の実体は何とも貧しい内幕であったことと、暴力団と総会屋が一体であることが明らかになった事件だった。


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