阪和銀行・副頭取射殺事件


−経緯−
平成5年8月5日午前7時50分頃、和歌山県を本拠地とする地方銀行の阪和銀行副頭取・小山友三郎さんが自宅に迎えにきたハイヤーに乗り込んだところ、突然白ヘルメットでサングラスの中年男が近づき、不思議なことに「部長!」と叫んでピストルを3発発射。小山副頭取は30分後に死亡した。

名門地方銀行の副頭取が白昼堂々と射殺されたことに大きな衝撃が走った。特に、バブル崩壊後の債権回収や融資打ち切りなどトラブルが続出している銀行業界では恐怖のどん底に陥った。が、結局この事件は警察の懸命な捜査にもかかわらず迷宮入りとなった。

同行では以前から闇社会とのトラブルがあり様々な憶測が続いた。特に事件から4年後の平成9年11月、和歌山県警が特別背任容疑で同行の橋本元頭取等が逮捕され、複数の暴力団・右翼団体に食い物にされ「ヤクザの貯金箱」とまで呼ばれるようになっていた実態が明らかになった。同行は前年の平成8年11月に業務停止命令をうけ事実上倒産した。この時に当局が入手した資料に「特殊案件貸し出しリスト」があり、廃業直前まで暴力団関係、右翼団体関係などに総額14億5000万円の不正融資をしていたことが発覚した。

−蟻地獄−
同行が廃業まで転落するきっかけは平成3年9月に月刊誌「SEIKAI」で同行経営陣への批判記事からだった。同行は当初無視していたが、福田秀男頭取(当時、以下同)の長男である福田文七郎常務の私生活を暴露されるなど多大な影響を及ぼした。そこで、発行元の政界出版社を相手取り損害賠償を求める民事訴訟をおこした。これに対し同誌はインサイダー取引疑惑など同行への攻撃を益々強めていった。

この頃、同行では橋本副頭取と福田常務、小山専務の3人の経営陣抗争が激化していた。そのため橋本副頭取は小山専務が自分の失脚を目的に出版社へ記事内容をリークしていると憶測し、知人の紹介で和興開発の前田喬社長へ出版社との仲介役を依頼した。だが、この時の話し合いで同行は仲介を断った(恐らく、同行にとって不利な条件が多々あったと思われる)。

だが、前田喬社長は「SEIKAI」の記事中止をさせれば阪和銀行からの融資を得ることができると考え、今度は小山専務へアプローチを始めた。そこで自分の長男・前田雅生が社長を務める不動産会社で三共土地開発に融資依頼することを思いついた。ここに和興開発と暴力団組長らが共同で三共土地開発に阪和銀行から融資させる構図が出来上がった(この会社は設立当時、広域暴力団組長や右翼団体幹部が役員を勤めていた)。

平成4年5月、阪和銀行の小山専務、暴力団組長、前田喬社長、政界出版社の社長が一同に集まり「福田常務による政界出版社への損害賠償請求訴訟の取り下げ」を条件に同誌の連載記事中止が決定した。ところが、福田常務は訴訟取り消しを拒否した。

この頃、株主総会で福田秀男頭取の引退、福田文七郎常務の解任が決定し小山専務が副頭取に、橋本副頭取が頭取に昇格した。が、その裏では福田元常務の政界出版社への訴訟取り下げの約束が実行できず、小山副頭取は苦しい立場に追い込まれていた。この結果、約束違反だとして暴力団組長や前田喬社長らは同行からの融資話をエスカレート。小山副頭取は行内の反対を押し切って、不正融資を重ねていった。

平成9年11月、特別背任に連座したとして、橋本元頭取ら旧経営陣と融資先である三共土地開発の前田雅生社長、実父・和興開発の前田喬社長、暴力団組長等を逮捕した。しかし、結局は橋本元頭取だけが起訴され平成11年3月、一審で懲役2年、執行猶予3年を言い渡された。


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