筋弛緩剤・投与殺人事件


−経緯−

宮城県警泉署捜査本部は平成13年1月6日、宮城県仙台市の「北陵クリニック」で筋弛緩剤(きんしかんざい)を小学校6年生の女児に投与したとして準看護士の守大助容疑者(当時30歳)を殺人未遂容疑で逮捕した。


事件が表面化した1月6日までの2年間に北陵クリニックは不審な急変から死亡した事例が20人に上った。守容疑者が同病院に勤務したのは平成11年2月から平成12年12月までの約2年間で患者の不審な死亡が増加したのと符合した。平成12年10月31日、前述の小6の女児が虫垂炎で北陵クリニックに入院した。病院側は抗生剤を点滴する処置を取ったが容態が急変した。女児は病院を転送され一命は取りためたが脳に傷害が残り植物状態になった。女児の血液を採血し分析した結果、筋弛緩剤の成分が出てきた。


この頃、病院側は守容疑者が担当する患者に容態が急変し重態若しくは死亡するケースが目立ち不審を抱いていた。そこで、同病院は泉警察署に相談し守容疑者の内偵を始めた。同年12月4日、守被告は病院から退職勧奨を勧告された。同夜、私物を取りに病院へ行った守容疑者は廃棄物を処理するため赤い箱を廃棄小屋に捨てようとした際、通用口に居た私服警官に呼び止められた。赤い箱の中身を点検すると筋弛緩剤の空アンプルが出てきた。更に筋弛緩剤の在庫を確認したところ守容疑者が20アンプルを発注し、23アンプルが使途不明だったことが判明した。

これらの状況から捜査本部は守容疑者が患者に筋弛緩剤を投与したとみて殺人未遂で逮捕したのだった。逮捕した直後の守容疑者は犯行事実を認めたが、その後一転して「犯行を否認し無罪」を主張した。
守容疑者は厳しい尋問と嘘発見器などによる精神的ショックで「やった」と言えば家に帰れるような気がし犯行を認めてしまったと供述した。

検察側は小6女児の殺人未遂を含めて5件の殺人及び殺人未遂で守容疑者を逮捕、起訴した。
●平成12年2月2日
女児(当時1歳)に点滴していたが不具合があったため守容疑者が介助。筋弛緩剤が入った注射器を三方活栓に接続し重態に至らせた容疑。
●同年10月31日
小6の女児に抗生物質の点滴剤に筋弛緩剤を混入させ植物状態に至らせた容疑。
●同年11月13日
男児(当時4歳)の手術後、点滴に筋弛緩剤を混入し重態に至らしめた容疑。
●同年11月24日
女性(当時89歳)に生理食塩水の点滴に筋弛緩剤を注射針で刺して混入し殺害した容疑。
●同年11月24日
男性(当時45歳)が外来患者として診察。処置室で点滴投与する際、筋弛緩剤混入の抗生剤を看護婦に渡し、呼吸困難に至らしめた容疑。

−公判−
平成15年11月28日、仙台地裁で検察側は「前代未聞の無差別連続殺人・殺人未遂事件」として守容疑者に無期懲役を求刑した。

検察側の主張は、犯行動機について《守被告が容態急変場面を作り出すことで、得意な救急措置を活かして活躍したかったほか、医師や看護士が対応に追われ慌てる様を見て楽しみたかった》とした。 

これに対して、守容疑者及び弁護団は《最初から事件は発生しておらず、5件の容態急変はだれかに引き起こされたものではない。患者に筋弛緩剤が投与された事実は存在しない》と冤罪を主張。


平成16年3月30日、仙台地裁で「体内に故意に筋弛緩剤を注入した犯人はいずれも被告人」と述べ5件全てを守被告の犯行と断定し「無期懲役」を言い渡した。これに対して弁護側は「守被告は公私ともに幸福で、患者とも親しかった。犯行に及ぶ動機は一切無い」として即日控訴した。


平成18年3月22日、仙台高裁は守容疑者の控訴を棄却して一審の無期懲役を支持した。これに対して守容疑者は「絶対に私はしていません」と発言し裁判長から退廷を命じられた。守容疑者は即日上告した。


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