富士見産婦人科病院・乱診事件


−経緯−
昭和55年9月11日、埼玉県警は埼玉県所沢市の「芙蓉会・富士見産婦人科病院」で医師の資格が無い同病院の理事長・北野早苗(当時55歳)を医師法違反、保助看法違反の容疑で逮捕した。北野は、超音波診断装置を操作して健康な妊婦を「子宮ガン、子宮筋腫」などの病名をあげ「あなたの卵巣は腐りかけている。ただちに手術しなければ危ない」などと診断して1回の手術で140万円前後の報酬を得ていた。

手術そのものは、北野の妻で同病院の院長・千賀子ら5人の医師が執刀していたが、左右の卵巣を一度に切除するなど一般の病院では考えられない手術をおこなった。しかも、富士見病院は分娩手術以外の手術が2年間で1152件と同規模の他病院と比較しても異常に多い乱診・乱療であった。この5人の医師は北野の行為を黙認、従っていたことも判明した。この結果、多数の何ら問題の無い健康な女性が二度と子供が産めない体にされた。

この乱診が発覚したのは、妊婦患者が北野の診察により「子宮ガン」を宣告された後、他病院で診察を受けた。ところが、その病院ではまったく問題が無いことを医師から告げられた。このような告発が警察に相次ぎ、内偵の結果北野の無資格診療と不要手術が発覚したのだった。

−豪華な病院施設と賄賂攻勢−
富士見病院では、診察に来る患者を次々に入院させ手術をおこなった。この結果、病院の資金は潤沢で病院内に美容室やアスレチック室、ラウンジなどの施設をつくり一流ホテルを思わせる構えであった。このため、埼玉県内はもとより近県からも多数の妊婦が診察に来るなど繁盛していた。更に北野は、当時の斎藤邦吉厚生大臣に1000万円、大物政治家に5000万円など政治献金をばら撒いた。その結果、斎藤は厚生大臣を引責辞任した。

−刑事と民事−
昭和63年1月29日、浦和地裁は北野元理事長、千賀子元院長に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。が、傷害罪に関しては「利用目的なくして手術を行ったという証拠は無かった」などの理由から不起訴処分とした。

民事訴訟では、昭和56年に元患者の女性ら63人が「でたらめな診断で正常な子宮などを摘出された」として約14億円の賠償を求める訴訟を起こした。平成11年6月、東京地裁は北野元理事長、千賀子元院長ら7人に賠償を命じた。その結果、北野元理事長と千賀子元院長は控訴を断念、もう1人の医師は1億5000万円の支払いで和解が成立。残る4人(青井保男、堀八重子、楢林重樹、佐々木京子)の医師が控訴した。

平成16年7月13日、最高裁は4人の医師の上告を棄却し元理事長夫妻らと合わせて5億1400万円の支払いを命じた。提訴から23年を経て決着した。平成17年3月2日厚生労働省の医道審議会は千賀子元院長の医師免許取り消しと元勤務医ら3人を2年から6ヶ月間の医業停止の行政処分を決定した。


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