足利事件


−経緯−

栃木県・足利市で平成2年5月12日の夕方、パチンコ店勤務・Aさんの長女マミちゃん(当時4歳)が突然行方不明になり、翌13日足利市内の渡良瀬川の河川敷で全裸にされたマミちゃんの絞殺遺体を発見した。

前日の12日午後5時50分頃、マミちゃんは父親のAさんと一緒にパチンコ「ロッキー」に入った。パチンコ店内の休憩室で遊んでいたマミちゃんが、外で遊ぶからとAさんに言い残し店外に出た(6時10分頃)。Aさんが娘を見たのは、これが最後になった。

その後、景品交換所の女性や客が一人でパチンコ店の駐車場で遊んでいるマミちゃんを目撃している。最後に目撃されたのが、パチンコ店の隣のK宅で、マミちゃんは生まれたばかりの柴犬の子犬を見ようとK宅の門の中へ入ってきた。K宅の主人が「犬に噛まれるから危ないよ」と注意すると、マミちゃんは残念そうに出て行ったという。これが、6時40分頃で、それ以降マミちゃんの足取りはぷっつりと途絶えた。

7時頃、マミちゃんが居なくなったことに気付いたAさんは、店内を捜すがマミちゃんは見当たらない。不安になったAさんは、駐車場や付近を捜しだす。更に約600メートル離れた渡良瀬川の土手まで捜したが行方は判らなかった。同日の夜、Aさん両親は足利署に届けを出した。

届けを受理した警察は迅速な捜査を開始する。というのは、足利市では昭和54年にマヤちゃん(当時5歳)、59年にはユミちゃん(当時5歳)が行方不明になり、マヤちゃんは渡良瀬川の河川敷で、ユミちゃんは市内の畑で遺体が発見された。この事件は今だに未解決の状態だった。このため、マミちゃんの行方不明届を受理した警察は大規模な捜索を開始したのだった。

翌日の13日、渡良瀬川の河川敷を徹底的に捜索した結果、河川敷の運動場先の葦が茂った中洲で、絞殺されたマミちゃんの遺体が発見された。遺体は不思議なことに、顔に砂が付着していたが顔以外には付着していなかった。このため、殺害現場は他にあると推定された(運動場に公園があり、この砂場で窒息死させ中洲に運ばれた可能性がある)。

−容疑者検挙−
警察は、パチンコ店に出入りしている客や地域の不審者、前科者など徹底的に捜査を始める。警察にも多数の情報が入り、一つ一つを潰していったが犯人に結びつく手掛かりは無かった。
半年後の11月2日、市内の住人から「週末だけ借家に住む不審な中年男性」が居るとの情報があった。駐在所の警察官が、その借家へ訪問したところ、出てきたのが《幼稚園バス運転手・菅谷利和(当時44歳)》であった。

菅谷宅に上がりこんだ警察官は、多数のアダルトビデオやグッズを見て怪しいと直感する。が、多少不自然に感じる週末だけの借家利用は、同じ市内にある自宅では、両親と妹の4人暮らしで3間はあまりにも狭く、借家を借りたのも極自然であった。

しかし、警察は「菅谷は、マミちゃんが行方不明になったパチンコ店に頻繁に出入りしていた」という情報も得て、益々嫌疑をかけるのであった。警察は、12月3日から逮捕される平成3年12月2日までの1年間、尾行を続ける。この間、菅谷が出したゴミ袋から精液が着いたティッシュペーパを押収し、マミちゃんから検出された精液とのDNA鑑定を行う。

このDNA鑑定で、1/1000の確立で菅谷の精液であることが判定され、平成3年12月1日菅谷を任意同行。菅谷は犯行を否認したが、午後10時過ぎ犯行を自供。翌2日午前1時15分逮捕された。

−疑問点−
菅谷は一旦犯行を自供したが、一審公判中に自供を全面否認し、無実を訴える。菅谷の自供は矛盾点が多い。犯行に及んだ経緯は、自分では殆ど供述できない。捜査官が「こうなのか?」の問いに「多分そうです」という会話が続く。弁護士との面会でも「つい、しゃべっちゃったんです」というような軽い会話をする。

パチンコ店でマミちゃんに声をかけて、自転車で渡良瀬川に連れだして犯行したという道順も、遺体発見直後の警察犬の探索では、まったく異なる道順をたどった(供述した道順とは反対方向)。警察は、警察犬の探索報告は一切公判で明らかにしていない。
絞殺した方法も矛盾点が多く、マミちゃんの顔に付いていた砂も明確にできていない。
DNA鑑定も、当時の測定方法は完全に確立されておらず証拠能力として疑問を呈する専門家も居る。

警察は、マヤちゃん、ユミちゃんの二人の殺害に関しては立証できず、マミちゃん殺害・遺体遺棄に関して菅谷を起訴した。平成5年7月7日一審で無期懲役の判決。平成8年5月9日二審で控訴棄却。平成12年8月16日最高裁で菅谷の無期懲役が確定した。

−冤罪だった−
服役中も無罪を主張していた菅谷に救いの手を差しのべたのが佐藤博史弁弁護士等だった。弁護側は、当時のまだ完全に確立されていなかったDNA鑑定方法に疑問を抱き、現在の最先端DNA鑑定方法での再鑑定を裁判所に申請し続けた。現在は、当時と比較にならない1/4兆7000億という高精度の技術が確立されている。

結果、再鑑定では、検察側、弁護側のいずれでもマミちゃんの肌着に付いていた体液と菅谷のDNAが不一致となり、高検もその結果を無視することができず、「無罪を言い渡すべき証拠に当たる」と判断した。

平成21年6月4日、千葉刑務所に服役していた菅谷は17年半ぶりに釈放された。これにより、再審は決定的で無罪が確定する。菅谷は、記者会見で、服役中に両親が他界したこと。自身の運転免許が失効したことなど無念を吐露した。また、犯人ではないのに何故自供したのかとの問いに、取調べ官が髪の毛を掴んだり怒鳴ったり高圧的な状況で嘘の自供をしてしまったと発言。警察、検事などは絶対に許せないと怒りをあらわにした。


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