辻嘉六事件(隠退物資事件)


−経緯−

昭和22年3月29日、衆議院決算委員会で日本自由党の世耕弘一代議士は、「日銀の地下倉庫に隠退蔵物資のダイヤモンドがあり、密かに売買されている」と発言。これにより、衆院の「不当財産取引調査特別委員会」が調査することになった。

隠退物資とは、旧日本軍が本土決戦に備えて在庫した燃料・アルミ・銅・貴金属・食料(米・味噌・醤油他)などの物資をいう。この物資は約2400億円相当(現在の貨幣価値に換算して数十兆円)になり国内各所に分散貯蔵していた。

終戦前日の昭和20年8月14日、当時の鈴木貫太郎内閣は、米軍に接収される前に安く民間に払い下げる法案を閣議決定した。ところが、この膨大な物資が軍人・官僚・政治家などによって不正に処分され忽然と消えてしまった。

敗戦直後、国民は配給も滞り「1000万人飢餓死説」が流れる中、こうした物資を闇ルートに横流しし、その資金で政界・官界に金をばら撒き、政治を牛耳ろうとしたフィクサー達がいた。この中で、児玉誉士夫、小佐野賢治らと並んで大物フィクサーに辻嘉六がいた。

「不当財産取引調査特別委員会」が調査を開始したところ、実業家の中曽根幾太郎が隠退物資である「軍服」を闇ルートに払い下げて莫大な金を稼いでいることが判明した。その金の一部が大物フィクサーである辻嘉六に渡り、自由党の鳩山(その後、総理大臣)、河野一郎らに現金20万円、饗応で数十万円の接待をしていたことが判明した。

辻は、その他大物政治家に金をばら撒き、政界への発言力を増して、自身に有利な事業展開を図った。
が、東京地検は政界にメスを入れることができず、金を受け取った政治家を偽証罪として告発、中曽根を詐欺罪で起訴するに留まった。

−謎のM資金−
世耕代議士の国会での暴露発言は、その後現在に至るまで様々な噂が続いている。俗に言う「M資金(GHQの経済科学局長のマーカット少将の頭文字を取ったもの)」である。当時の日銀の地下金庫に時価100億円以上(現在の価値で数兆円)のダイヤモンドやその他の物資が温存され、この資産は闇世界で融資され巨大な利益を上げているという噂だ。このM資金の融資話で損害を被った大会社が今でもある。

日銀の地下倉庫にこれらの資産が隠されていたという事実はあった。当時のGHQ経済科学局は日銀の地下金庫を捜索しダイヤモンドや貴金属類を押収している。この時、押収したダイヤモンドを隠し持って米国に帰国した経済科学局の中佐が逮捕された事実もある。が、これらの押収した物資の全体像は今でも謎になっている。


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